日本の神社やお寺には、よくイチョウが植えられていますが、これらのイチョウの中には樹齢が数百年から一〇〇〇年といわれるものも少なくありません。
イチョウの樹そのものの寿命は数千年といわれています。
イチョウが地球上に出現したのは、いまから二億五〇〇〇万年も前だといわれ、現存する樹木のうちでは最古の部類に入ります。
そして、いまから約六〇〇〇万年前、地球上にたび重なる地殻変動や氷河期が現れ、恐竜や裸子植物などの多くが姿を消すようになったにもかかわらず、イチョウは、この過酷な環境にも耐えて、生き延びてきたのです。
しかも、生物学上は、最初に出現したころとほとんど変化しないままに今日に至っているうえ、長い寿命をもっているということから、神秘的な生命力をもつ樹木だといわれるようになったのです。
このような神秘的な生命力をもつイチョウには、何か特別な成分が含まれているのではないか、と考えた研究者がいました。
ドイツのハイデルベルク大学有機化学研究室の研究者や、カールスルーエにある製薬会社シュワーベ社の研究者たちでした。
彼らがイチョウに注目したきっかけは、広島・長崎に原爆が投下された後、被爆した植物は当分芽をだすことがないだろうといわれていたのに、イチョウがまっさきに芽を吹いたことでした。
その生命力は、彼らに大きな驚きをあたえたのです。
彼らは、イチョウ葉に含まれている成分を分離・確認しながら、その生理効果の研究にとりかかりました。
一九六〇年代前半のことでした。