ファッションビジネスは場所を選ぶ。
なぜなら、ファッションは美しさやかっこよさを競う世界だからである。
東京に例をとれば、ファッションとモデルのメッカは青山、代官山、原宿といってよいだろう。
人気のあるブランドや話題になる店の多くは、必ずといっていいほどこれら三地区にある。
特に、地方から東京進出をめざすファッションメーカーは、東京での最初の拠点に、青山、代官山、原宿を選ぶことが多い。
それだけ、これらの場所はファッションメーカーにとって憧れの街なのである。
そこでファッションビジネスにとってどんなに場所が大切か、原宿を例にとりながら話してみよう。
一九七〇年代初めの原宿は東京でも静かな街の一つであった。
もしその静かさの中に、今あるファッションの街を予見させるものがあったとすれば、まず原宿という街の立地のよさが考えられる。
東京オリンピックの時にできたいくつかの施設(国立代々木プールや、関係者の宿舎に利用されたコープオリンピアマンションなど)や公園、そして都心でもっとも美しい並木が千メートルほど続く表参道通りがあり、その通りに平行して細くて長い裏道があったことが、原宿でのファッションビジネスの可能性を示している。